ジョセフ・ジャパンに欠かせないSO、またプレースキッカーという大役を担い、これまで最高の仕事をしている田村優選手。アルゼンチン戦からの3試合はもちろん、日本時間きょう26日(土)夜のフィジー戦でも先発が決まっています。6月のスコットランド戦を含めると6試合連続先発ということになります。
取材となると寡黙ですが、ピッチではチームメイトと常にコミュニケーションをとり、細かい指示を出しながらアタックを統括。「ディフェンスは僕の仕事ではありません」と言い切るほどアタックに徹する田村選手に、ウェールズ戦を振り返ってもらうとともに、フィジー戦の展望を語ってもらいました。
──ウェールズ戦は素晴らしいパフォーマンスでした。
「結果として負けているので、そういうこと(自分のパフォーマンスがよかったと思っているわけではない)です。ただ、チームがいい方向に向いているのはいいことだと思います」
──前の日本代表とは違うアプローチをしているチームですが、いま一番気をつけていることは?
「いや、とくにないですね。自分の仕事をしっかりやることぐらいでしょうか」
──もう少し具体的にお願いします。
「コーチから求められたことをやるということです。詳しくは言えないですけど、その週ごとにいろいろあります」
──ジョセフHCのやっているラグビーを言い表すなら? 例えばアンストラクチャーに持っていくラグビー、ですとか。
「(アンストラクチャーに)持っていくのもそうですし、一人一人が自分の仕事をしっかりやりきるラグビー、という感じですね。SOとしても特別何かをやるというより、ラグビー選手としての普通の仕事、判断をするということです」
──去年までと今とで、求められている「判断」に違いはありますか。
「そんなに変わらないと思います」
──ウェールズ戦でいいアタックができた要因は。
「アタックは、僕以外のみんなもプランを理解してくれていて、やることが明確なので、僕はみんなに助けられながらやっています。僕がやることはそんなに多くないし、みんな一人一人が役割を休みの時間なりに覚えた上でやっているので、コールはしやすいですね。細かいことを言い続けるようにしています」
──そのコールが素晴らしいゲームコントロールにつながっています。
「僕がというより、みんなが精度高くやっているということじゃないでしょうか」
──フィジーに対して意識していることは。
「とくにないですね。自分たちがすべきことをするだけです。やるラグビーのベースは変わりません。1週間準備したことを出すだけです」
──ツアー最終戦、どんな勝ち方が理想でしょうか。
「どんなというよりも、準備してきたことを出すしかありません」
──それが出せればフィジーに勝てる。
「そうですね、はい」
田村選手が牽引しているように見える(もちろん実際には牽引しているわけですが)ジョセフ・ジャパンのアタック、実はチーム全員がプランを十分に理解し各の仕事を遂行しているからこそ、田村選手も指示を出しやすくなり、彼とチームの意図しているアタックが実行可能となる。そういう図式だったことが今回の取材ではっきりわかりました。「みんなに助けられている」。孤高の司令塔といったイメージを覆すような、シンプルでいて深い言葉だと思います。
田村戦はとくに意識していないというフィジーですが、間違いなく難敵です。そんな相手にどのようなアタックを見せてくれるのか。田村選手のプレーに引き続き注目しましょう。
<取材・文・写真/齋藤龍太郎(楕円銀河)>