新生エディーJAPANの初陣はラグビー発祥国イングランドに17-52で完敗も「超速ラグビー」の片鱗見せる

初陣。ラグビー日本代表にその言葉が使われるのは2016年以来、約8年ぶりとなる。

2024年6月22日(土)、エディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)が再任して初めての日本代表(世界ランキング12位)のテストマッチが「リポビタンDチャレンジカップ2024」として東京・国立競技場で行われた。相手は2023年のラグビーワールドカップで対戦し、日本代表を12-34で退けたラグビー発祥国のイングランド(同5位)だ。

過去の対戦成績は日本代表の0勝11敗。新エディー体制初戦は若い選手が多数起用されたこともあり、国際経験に大きな差がある対戦となったが、ホームのファンの前で初陣を飾るチャンスと言えるシチュエーションだ。FLリーチ マイケル主将、LOワーナー・ディアンズ、SH齋藤直人、SO李承信、CTB長田智希ら23年ワールドカップ出場組を中心に据えつつ、PR茂原隆由、HO原田衛、FLティエナン・コストリー、急遽先発に回ったCTBサミソニ・トゥア、そして大学生のFB矢崎由高が先発で初キャップ。新たな布陣で2027年のワールドカップまでの4年間をスタートさせた。

先発SOとして存在感を見せた日本代表の司令塔、李承信(撮影/齋藤龍太郎)

前半、日本代表は開始早々から相手を上回るスピード、モメンタムで主導権を握り、2分にSO李承信のPGで3-0と先制に成功。その後もエディー・ジョーンズHCが就任から標榜してきた「超速ラグビー」を体現したアタックを見せる。

警戒度を高めたイングランドは世界有数のフィジカルとスピードを武器に反撃に転じる。前半14分、FLチャンドラー・カニンガムサウスが力でインゴールに体をねじ込み、この試合初のトライを決める。次代を担う司令塔、SOマーカス・スミスがゴールを決めて3-7と逆転を許すと、24分にはSOマーカス・スミスが得意とするキレのあるランでトライ(3-14)。29分にはそのSOマーカス・スミスのパスを受けたWTBイマニュエル・フェイワボソが、さらに42分、SOマーカス・スミスのキックパスをキャッチしたCTBヘンリー・スレイドがトライを決め、3-26で試合を折り返す。

後半も、開始早々の3分にイングランドSHアレックス・ミッチェル、9分にNO8ベン・アール、18分に途中出場のSHハリー・ランドールに連続トライを許し、7連続被トライで3-45と大差をつけられた日本代表は、ここから「らしさ」を見せる。

26分、日本代表は敵陣でのラインアウトのチャンスを得ると、SH藤原忍のパスを受けたFL山本凱が相手ディフェンスをかわしながら大きくゲインし、一気にゴール前まで迫る。ラックからSH藤原忍、SO松田力也、LOワーナー・ディアンズとパスをつなぎ、左大外でそのラストパスを受けたWTB根塚洸雅がインゴール左隅へ飛び込んで待望のチーム初トライ。難しい角度からのコンバージョンキックをSO松田力也が決めて、スコアを10-45とする。

日本代表の初トライを決めたWTB根塚洸雅(撮影/齋藤龍太郎)

さらに直後の29分、自陣からパスを回して攻めた日本代表は、SO松田力也のパスを長い腕を伸ばしてキャッチしたLOワーナー・ディアンズがビッグゲイン。30mほど前進したところでフォローしていたFB山沢拓也に冷静にパスすると、受けた山沢がそのままインゴール中央にトライ。17-45と再び点差を縮める。

独走したLOワーナー・ディアンズからのラストパスを受けてトライを決めたFB山沢拓也(撮影/齋藤龍太郎)

34分にはイングランドLOチャーリー・ユールズがFPROによりレッドカードとなり日本代表が数的に有利になったものの、37分にFLサム・アンダーヒルにトライを許し、17-52という大差で敗れた。それでも集合から2週間弱という短い期間で準備を重ね、特に試合序盤と後半の2トライで「超速ラグビー」の片鱗を見せることはできた。その精度を上げ、ディフェンスの整備を進めることで、日本代表の目指す姿が徐々に見えてくることだろう。

この試合では唯一の大学生として先発し非凡さを見せたFB矢崎由高(撮影/齋藤龍太郎)

試合後の記者会見で、日本代表のエディー・ジョーンズHCは試合をこのように評した。

「非常に残念な結果で悔しいですが、現状の目標に照らすと、内容としては非常に大きな糧を得た試合でした。セットピースでイングランドとわたり合い、アタックに関してもいい方向に進んでいます。ただ、チャンスを活かしきれなかったという点では改善が必要です。

また、8人の選手が初キャップとなったことも非常に素晴らしいことだと思っています。若手の成長という観点からも大きな糧となりました。

もちろん残念な結果でしたが、エフォート(努力)としては申し分ないものを見せてくれました。選手たちが自分たちのやりたいプレースタイルを体現していましたし、今後4年間のプロジェクトの10日目であることを鑑みると、非常にいい方向に向かっていると思います」

また、FLリーチ マイケル キャプテンも課題と収穫を挙げた。

「チームにとって悔しい結果ですが、この経験は必ず自分たちの財産になると思います。今後の準備に必ずつながると思いますし、若い選手がどんどん出てきて(今日のように)強豪チームと対戦する機会もたくさんあるので、自信を持ちながら(修正すべき点は)直していけば、必ずこのチームは強くなると思います。

トゥイッケナムの試合(11月24日の再戦)に向けてもっといい準備をして、頑張りたいと思います」

日本代表はJAPAN XVとしてマオリ・オールブラックスとの2連戦に臨む。

取材・文・写真撮影/齋藤龍太郎(楕円銀河)

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