11月18日(土)、フランス随一のラグビーどころであるトゥールーズでトンガ代表と対戦し、5トライを奪うとともに相手にノートライに封じて39−6で快勝したラグビー日本代表。今度は場所をパリ郊外のナンテールに移し、日本時間26日(日)早朝5時(※4時45分から変更)キックオフのフランス代表戦に向けてキャプテンズラン、すなわち前日練習を行いました。
会場のUアリーナは10月にこけら落としとなったばかりのヨーロッパ最大級の屋内型スタジアムで、今回のようなスポーツ仕様では32000席(コンサート時などは約40000席)という規模。ラグビーを含め球技が開催されるのは今回が初めて(!)です(モトクロスの開催実績はあるためスポーツ初開催とは言い切れず)。なお、来季からはフランスリーグTOP14のラシン92の本拠地となり、今季も12月22日にトゥールーズを招いての伝統ある公式戦が行われます。
さて、そんな最新鋭の会場に到着した日本代表の選手たちはスタジアムの雰囲気を堪能しながらウォームアップを開始。全面人工芝ということで、足元の感触を確かめるように走り込んでいました。
キャプテンズラン終了後、日本代表のジェイミー・ジョセフHCとキャプテンのFLリーチ マイケル選手の記者会見が行われ、スタジアムの印象やチームの状態、フランス代表についてなどの質問に答えました。
──スタジアムの印象は?
ジョセフ「非常に楽しみにしています。ここでテストマッチが行われるのは初めてということで、両チーム全選手にとって初めての試みになると思います。我々はトゥールーズでのトレーニングで人工芝を使った練習を3日間行い、非常に馴染むことができました。インドアで人工芝ということで、明日(の試合)は非常に速い、ジャパンにとって好都合の展開になると思います」
リーチ「見ての通り本当に素晴らしいスタジアムで、人工芝でプレーすることは日本の方が多いので日本にとって少し有利ではないかと思います」
──(現地メディア)フランスは望ましくない結果が続いているが、逆境に立っているチームに対してジャパンはどう戦うのか?
ジョセフ「フランス代表をリスペクトしています。フランスは(11月に)ニュージーランドや南アフリカといった強豪チームと戦ってきました。それを念頭に置いて考えていますが、その結果は気にせず、ティア2の日本としては最大の力を発揮しなければいけないと思っています。ここまで5週間チームとして活動してきて、ここまで長い期間続けて活動できたのは就任して初めてのことですが、非常にいい準備ができていて、非常にいいチームづくりができています。それがチームの自信につながってくると思います。また、リーチも言ったように人工芝のプレー経験は日本の方が多いと思うので、その点では我々の方が有利かもしれないと思っています」
リーチ「ジェイミーが言ったように、自分たちにフォーカスしています。そしていい準備もできたと思っています。フランスはここまで負けが続いていますが、ベストのチームと戦ってきましたし、世界的に知られているように底力があり、どこからでも攻撃を仕掛けて力を発揮してくるチームです。ですから決して楽な試合になるとは思っていません。しっかりチャンスをつかみたいと思っています」
──(現地メディア)フランスをリスペクトしているということだが、フランスはベストメンバーではない。ジャパンへの敬意に欠けるのではないか。
ジョセフ「パフォーマンスが十分でないからメンバーを変えたのではないでしょうか。相手がメンバーを変えたことよりも、自分たちにフォーカスを当てています。そこに特化してやってきたのでフランスの選手の知識はあまりないのですが、だからこそ自分たちにフォーカスを当てているわけです。私がフランスのコーチだとしたら、こうしてタフな試合が続いている時にメンバーをチェンジすることはいいことだと思っています。フランスのコーチもスコッド全体に信頼を置いているからこそメンバーを変更したのだと思います。オールブラックスに勝てなかったのは残念ですが、そこで発揮したパフォーマンスで選手たちにご褒美(出場機会)を与えたのではないでしょうか」
──フランスのFWに対する印象は?
リーチ「フランスはFWがよく、 スタイルはシャンパンラグビーと呼ばれています。でも本当(に強いの)はスクラムとモール。そこでさえタフに戦えれば十分勝機は生まれると思います。FWのチームとして(日本代表が)やらないといけないのはまずスクラム、セットピースのプレッシャーの部分です。それさえできればいい形が作れると思います」
──人工芝におけるスクラム戦は期待できる?
ジョセフ「フランスはスクラムが強く、スクラムに非常にこだわっています。しかしトンガ戦ではファーストスクラムまで25分かかりました。明日はいつどこでスクラムを組むことになるかわかりません。しかしアドバンテージはこちらにあると考えています。なぜならスクラムの認識が違うからです。日本はあくまでもスクラムを起点にしてそこからアタック、ディフェンスを展開するということを考えていますが、フランスはスクラムからペナルティーを狙ったりスクラム自体に重きを置いていますので根本的に違います。スクラムでは大いにプレッシャーをかけてくるでしょう。それにしっかり対抗しなければいけないと思っています。もし相手の3番がまっすぐ組んでさえくれれば問題ないと思いますが、内方向に組まれたら厳しくなるでしょう」
──(現地メディア)2019年のワールドカップまであと2年、ジャパンのアイデンティティーは確立されているのか。どんなチームを作り上げているのか。エディー・ジャパンとはどう違うのか。
ジョセフ「現状いいバランスが取れています。典型的なスタイル、型にはめられないチームになっていると思います。セットピースからもトライを量産していますし、カウンターやアンストラクチャーにもこだわってやっています。他の国と比べて体格は小さいので、多少のリスクを背負いながらも素早い展開を目指しています。ミスもありますが、2年後を見ながら発展を遂げたいです。エディーとの違いは明日の試合を見てご自身で感じてください(笑)」
厳しい戦いになることは間違いないですが、勝利の自信がひしひしと伝わってくる記者会見でした。
【日本代表メンバー】※はキャプテン
1 稲垣啓太(パナソニック)
2 堀江翔太(パナソニック)
3 具智元(ホンダ)
4 ヴィンピー・ファンデルヴァルト(NTTドコモ)
5 真壁伸弥(サントリー)
6 姫野和樹(トヨタ自動車)
7 リーチ マイケル(東芝)※
8 アマナキ・レレイ・マフィ(NTTコム)
9 流大(サントリー)
10 田村優(キヤノン)
11 福岡堅樹(パナソニック)
12 立川理道(クボタ)
13 ラファエレ ティモシー(コカ・コーラ)
14 レメキ ロマノ ラヴァ(ホンダ)
15 松島幸太朗(サントリー)
16 坂手淳史(パナソニック)
17 石原慎太郎(サントリー)
18 ヴァル アサエリ愛(パナソニック)
19 徳永祥尭(東芝)
20 フェツアニ・ラウタイミ(トヨタ自動車)
21 田中史朗(パナソニック)
22 シオネ・テアウパ(クボタ)
23 藤田慶和(パナソニック)
【フランス代表メンバー】※はキャプテン
1 ジェファーソン・ポワロ(ボルドー・ベグル) 2 ギエム・ギラド(RCトゥーロン) 3 ラバ・スリマニ(クレルモン・オーヴェルニュ) 4 ロマン・タオフィフェヌア(RCトゥーロン) 5 セバスチャン・ヴァアマイナ(クレルモン・オーヴェルニュ) 6 ジュディカエル・カンコリエ(クレルモン・オーヴェルニュ) 7 セクー・マカルー(スタッド・フランセ) 8 ルイ・ピカモール(モンペリエ) 9 バティスト・サラン(ボルドー・ベグル) 10 フランソワ・トゥラン=デュック(RCトゥーロン) 11 ガブリエル・ラクロワ(ラ・ロシェル) 12 アンリ・シャバンシー(ラシン92) 13 ダミアン・ピノー(クレルモン・オーヴェルニュ) 14 テディー・トマス(ラシン92) 15 スコット・スペディング(クレルモン・オーヴェルニュ) 16 カミーユ・シャ(ラシン92) 17 セバスチャン・タオフィフェヌア(ボルドー・ベグル) 18 ダニエル・コッツァ(カストル) 19 ポール・ジェドアジラック(クレルモン・オーヴェルニュ) 20 ファビアン・サンコニー(ブリーヴ) 21 アントワーヌ・デュポン(トゥールーズ) 22 マチュー・バスタロー(RCトゥーロン) 23 ウーゴ・ボヌヴァル(RCトゥーロン)
<取材・文・撮影/齋藤龍太郎(楕円銀河)>