昨年11月、フィジー代表との第三国同士のテストマッチに敗れた地(ヴァンヌ)でもあるフランス。折しも2023年のラグビーワールドカップ開催が決定した中、日本代表はそのフランスのトゥールーズで11月18日(日本時間18日深夜)にトンガ代表と対戦しました。日本代表は現行ジャージーになって初めて、青のセカンドジャージーを着用しての試合となりました。
11月13日現在の世界ランキングは日本代表が11位、トンガが14位。ランキングではジャパンの方が上ですが、フィジカルだけ切り取ればトンガの方が格上であることは明らかでした。大きく重く強い相手にどう戦うか。日本代表の真価が問われる一戦となりました。
トンガのウォークライである「シピ・タウ」が終わりキックオフを迎えると、日本代表はいきなり主導権を握ります。前半3分、日本代表は敵陣5メートルラインでのラインアウトを起点に展開し、相手ディフェンスのプレッシャーを受ける中パスを受けたWTBレメキ ロマノ ラヴァ選手が、ディフェンスが未整備だったピッチ中央をすり抜けゴール下へトライ。SO田村優選手のゴールも決まり、日本代表が7−0と先制します。
前半29分、トンガLOハラレヴァ・フィフィタ選手のシンビンにより日本代表は再び敵陣深い位置からのラインアウト。そこからモールで前進し、トンガ出身のNO8アマナキ・レレイ・マフィ選手がトライ。日本代表が17−6とリードを広げました。
続く32分、今度はFLリーチ選手がこの試合WTBの位置でたびたび見せていた鋭いランでディフェンスを突破しトライを決めます。24−6とした日本代表は38分にもPGで3点を追加し、27−6で前半を終えました。
後半は一転、意地を見せたいトンガがボールをキープし攻め続けます。しかし12分、トンガはトライの絶好機でインゴールノックオン。日本代表はジョン・プラムツリー ディフェンスコーチの指導による堅牢なディフェンスシステムと個の激しいタックルで、トンガにトライを許しません。
ディフェンスからペースをつかんだ日本代表は19分、敵陣深くでのモールでインゴール右隅へ迫ると左オープンへ展開し、SO田村選手からのパスをWTBレメキ選手が受けて、インゴールへスワンダイブしトライ。WTBレメキ選手のこの試合2本目のトライで34−6とさらにリードを広げます。
すでにセーフティーリードを確保していた日本代表ですが、攻撃の手を緩めません。後半34分、再三トンガの猛攻に耐える中、アタックの好機を得た日本代表は途中出場のFB藤田慶和選手が得意のランから勝手知ったる「同僚」のWTB福岡堅樹選手へフラットパス。ダメ押しのトライを決めて、39−6で日本代表が勝利を手にしました!
エディー・ジャパンが一度も勝てなかったトンガからの6年ぶりの勝ち星は、5トライを挙げたうえトンガをノートライに封じ手の快勝となりました。
試合後、日本代表ジェイミー・ジョセフHCは選手を褒め称えました。
「本当に誇らしいプレーをしてくれました。
非常にフィジカルなチームに対して互角に戦えていたと思いますし
次はフランス戦がパリで行われますが、
姫野和樹選手をFLにコンバートするなどメンバー変更を行った3列については、
「3列は今回いいプレーをしてくれていました。リーチを7番で起用して、姫野を6番に入れたことによってLOに真壁伸弥を入れることができました。彼も非常にいいプレーをしてくれたので、次のセレクションに頭を悩ませることになります」
また、戦術としてのキックについてはこう補足しました。
「序盤、裏にボールを入れて相手のラインスピードを緩めるという狙いで蹴りました。上手くいったこともありましたが、蹴るところの判断を誤ったケースもありました。キックするか、ボールを使ってアタックするかは絶妙なバランスが必要なのですが、そこが上手く機能する時とそうでない時がありました」
そして、会見に同席したキャプテンのFLリーチ選手も勝利に確かな手応えを感じていました。
「結果的に6点に抑えて試合に勝てたことはうれしいです。今週は「
テストマッチでは勉強しなければいけませんが、今日かなり勉強になったのは“勝負のアヤ”です。それをつかめればかなりいいアタックができるのですが、つかめない時はかなりプレッシャーがかかります。
テストマッチを勝つにはそういう時(アヤ)に気づいてアクションを起こす。次のテーマはそこにフォーカスしてやっていきたいと思います。フランスはトンガより倍以上強いチームなので、今成長した部分を全てぶつけて、自分たちがどの状態にいるのか確かめたいと思います」
リーチ選手は新しいディフェンスシステムの出来についても語りました。
「まだ完璧ではないですが、ちょっとずつよくなってきています。ひとりひとりのタックルがよくなってきているので、全然まだまだ成長できると思います。(ゴール前まで攻められても止められたことについて)成長していますね。でもまだまだワールドカップで勝つためのディフェンスまでは行っていません。ここで満足してはいません。(ディフェンスは何が良くなったのか? の質問に)連係と理解です。こういうディフェンスをしようという理解がよくなってきています。タックルもデカい相手に対してよくできたと思います」
続けて、トンガとのフィジカル面の優劣についてもリーチ選手はコメント。
「互角でしたが、僕らはフィジカリティーのマッチはしていません。ただ前に出てタックルしたいという意識の方が上です。自分たちはフィジカリティーで勝つチームではありません。僕らの賢いランニングは絶対に世界一。フィジカルでマッチしようとしたら勝てません」
最後に、試合内容と結果を100点満点で評価するよう問われると、ジョセフHCは「50点」と厳しく採点した上で、
「言えることは今回ノートライで押さえられたこと(が一番)です。振り返るとルーマニア戦ではリードしていたにも関わらず最後は相手を復活させてしまって、あのような結果になりました。今回は精神的なテストをするということに対してよく、冷静に、タフにやりきってくれたと思っています」
と、得点は辛かったもののあらためて選手を評価しました。
25日(日本時間26日早朝)はフランス代表との対戦です。戦術、規律、個人技、フィジカル。どれを取っても一級品の伝統あるティア1の国に対して日本代表はどう戦うか。ぜひ注目しましょう!
■その他の選手コメント
・WTBレメキ ロマノ ラヴァ選手 ※マン・オブ・ザ・マッチ
(2トライできて)気持ちよかった(笑)。3試合ぶりにやっとトライとれた。2本目はチームとしてすごくいいトライだった。ずっと順目順目に行って、コンタクトに行って、ディフェンスがどんどん少なくなっていったから(自分は)最後にインサイドに入るだけだった。スワンダイブは本当に気持ちよかった。1本目はSH田中さんにめっちゃプレッシャーがかかっていて、俺にパスが回ってきた。俺もめっちゃプレッシャーを受けたけど、前があいている、どうする? あ、まっすぐ行けばいいかと。(相手の)タックルを3、4人ぐらい外してそのまま(インゴールへ)行った。それで「全然行ける」と思った。トンガはフィジカルは強かったけど、全然行けると。でも、アタックではいいところもあったけど、やっぱりディフェンス(は今ひとつ)。トンガは強いから1対1のディフェンスをもうちょっとがんばらないと。
・PR具智元選手
スクラムは安定して組めました。ファーストスクラムまで長かったので、少し緊張しました。
・FL姫野和樹選手
ノートライに押さえられたことは次へのステップアップになったんじゃないかと思います。でも、まだまだかなと。トンガのフィジカルに対して受けてしまった部分もありますし、そこはもっと改善が必要かなと思います。(実際に体を当ててみて)純粋に強いなと思いました。でも、そのフィジカルのレベルでこれからやっていきますので、これからも成長してそのレベルでしっかりやれるようにもっと向上していきたいと思います。(どのあたりを意識?)ボールを持ったらシンプルに、少しでも前に出ることを常に意識しています。そうすることによって相手のディフェンスが(内に)寄って、外に大きなスペースがあくので、WTBに走ってもらうためにまずFWが前に出るということを意識しています。
・SH田中史朗選手
(キックについて)今日みたいに強い相手でも前に出られれば(今後も今日のように)やっていきたいですし、相手がしっかりディフェンスしてくるチームであれば戦術を変えてやっていかないといけないですね。(今日は裏に蹴るケースがオーストラリア戦より増えたが?)相手には大きい選手、走れない選手が多かったので、相手の背後に落としてその選手を疲れさせることを意識していました。後半は相手が走れなくなってきていたので、外に回せばスペースも空いていますし、相手のサポートも遅くなるのでチャンスが増えるということで、そういう戦術を理解しながらやっていました。(ディフェンスの手応えは)トライを取られそうになった場面もありましたが、そこでしっかり我慢できたのは成長できている部分かなと思います。(負けが続いていたが)若い選手もいっぱいいて、勝つということを知らなかった選手もいっぱいいるので、そういう選手に日本の代表として勝つということをわかってもらえたことは自信にもなるでしょうし、チーム全体として士気が上がるような勝利だったと思います。(フィジカル面は問題なかったのか、それとも少しやられたのか?)半分半分ですね。プレッシャーを受けた場面もありましたがそこでしっかり守りきれたというのは進歩した部分ですし、自身にしていいと思います。(フランス戦に向けてのポイントは?)やることは一緒ですが、フランスはタックルに入った後にボールをつないでくるラグビーをしてくるので、そこをしっかりシャットアウトできるようなディフェンスができれば、またそれをずっと継続できるようなディフェンスができれば失点は減らせるんじゃないかと思います。
・WTB福岡堅樹選手
トライを取れたことは良かったですし、チームとしても相手がフィジカルで戦ってくるところで逃げずにしっかり戦えて、ノートライに押さえられたことはすごくよかったです。
・FB藤田慶和選手
出られれば楽しもうと思っていましたが、10分だったのでもうちょっと出られるようにフランス戦に向けてがんばりたいと思います。その中でも(福岡のトライで)1アシストできたのは収穫でした。
・FB松島幸太朗選手
相手がフィジカルを(前面に)出してくるのはわかっていたので、まずは自分たちが先に(フィジカル面を)出すということを意識して、結果的にフィジカルの面で戦えました。それがいい結果につながったと思います。(意識したことは?)フィジカルは強くても横の動きが苦手だったり、そういう選手が多かったので、ジャパンのスピードを使って相手を崩していくということは意識していました。(ダブルアクションについて)一人の人間は一つの仕事で終わるのではなく、常に次の仕事を探しながらやっていくことは、練習から言われていました。そこはみんなすごく意識できたと思いますが、ブレイクダウンのところで当たれなかったこともあったので、そこはしっかりやっていきたいです。(リロードが早かったが)早く試合の流れに帰りたいので。常にチャンスを探して、そういう意識でフランス戦もやっていきたいですね。フランス戦はすごくアウェーの雰囲気になると思うので、そこを固くならずに自分たちの強みをしっかりわかった上で次の試合でも(いいパフォーマンスを)出せるように練習から自信をつけられるようにやっていきたいと思います。(2023年大会はフランスだが?)フランスでラグビーができているのも今後の経験に関わってくると思うので、しっかり自分たちの準備をやっていきたいです。
・トンガ SH岡新之助選手
日本ではWTBですが代表ではSHです。もともとはSHでした。今日はレベルが高さを感じました。緊張していました。(代表には)選ばれたからトンガを選択しました。
<取材・文・撮影/齋藤龍太郎(楕円銀河)>