アジア・ラグビー・チャンピオンシップでの度重なる苦戦、サンウルブズの惜敗やチーターズ戦での惨敗を経て、テストマッチ3連戦が行われる6月のウィンドウマンスを迎えたラグビー日本代表。その初戦、ルーマニア代表戦が10日(土)熊本・えがお健康スタジアムで行われました。
2019年のラグビーワールドカップ日本大会、ホスト国の日本代表はプールAに入りましたが、欧州予選1位チームも同プールに入ります。その最有力候補こそルーマニア。つまり、この対決は互いに絶好の前哨戦となったわけです。
試合前、日本代表で最も注目を集めたのが、2015年のラグビーワールドカップでキャプテンとしてチームを牽引して以来の代表復帰となったFLリーチ マイケル選手でした。チーフス(ニュージーランド)でも活躍するなど実績は十分、メンタル面も充実し満を持しての1年半ぶりの代表合流となりました。この試合が節目の50キャップ目となったキャプテンのHO堀江翔太選手、そしてNO8アマナキ・レレイ・マフィ選手、SH田中史朗選手、WTB福岡堅樹選手・山田章仁選手といった「2015年組」とともに先発出場しました。その一方、FBにはチーム唯一の大学生(東海大4年)野口竜司選手が入ったほか、サンウルブズでもおなじみのCTBデレック・カーペンター選手が日本代表初キャップ。そしてリザーブ入りしたHO庭井祐輔選手も出場すれば初キャップと、最新の精鋭たちがメンバー表に名を連ねました。
今年3月、強豪ジョージアに勝ったルーマニア代表は、キャプテンのNO8ミハイ・マコヴェイ選手を筆頭に先発15人中10人が2015年のワールドカップメンバーとなりました。特に強力なスクラムを組むFW陣は脅威。日本代表としてはサンウルブズなどで鍛え上げられてきたスクラムがルーマニアを相手にどこまで通用するか試す、絶好の機会になりました。
試合は前半開始早々、ルーマニア代表SOフロリン・ブライク選手に2本のPGを許し0-6。先制された日本代表は12分、CTBティモシー・ラファエレ選手が相手の裏にグラバーキックを転がします。それに反応したWTB山田選手が颯爽とボールをかっさらい、インゴールへダイブ。トライとSO小倉順平選手のゴール成功で7−6と逆転します。19分、23分、33分にはSO小倉が3本のPGを決め16−9。そして37分、日本代表WTB福岡選手がルーマニアのディフェンスをかいくぐってトライを決めます。SO小倉選手の難しい角度からのゴールキックも成功、23−9と日本代表がリードを広げ前半終了となりました。
さらに後半開始早々の1分、日本代表はマイボールラインアウトを起点にアタックします。そしてSO小倉選手がFLリーチ選手に鮮やかなノールックパスを決め、相手ディフェンスのマークが外れたリーチ選手がそのまま走り込み豪快にトライ! 12分にもSO小倉選手のPG成功で日本代表は33−9とさらにリードを広げました。
勝負あり。そのように見えた試合でしたが、ここからルーマニア代表が猛攻を仕掛けます。後半15分、ルーマニアはラインアウトモールを押し込んでキャプテン・NO8のマコヴェイ選手がトライ。33−14とすると、25分にはWTBタンジマナ選手にもトライを許し33−21。その後は互いにチャンスを作るも、得点は動かず33−21のままフルタイムとなりました。
日本代表のジェイミー・ジョセフHCは、試合後の記者会見で手応えと反省を口にしました。
「まずは日本代表としてここまで体を張ってくれた選手におめでとうと言いたいです。(ただ、基本的に)我々のプランを遂行できていますが、プレッシャーがかかったときや暑い中では遂行すべき仕事ができなかったりすることがありました」
HO堀江キャプテンも笑顔はなく、反省モードのコメントでした。
「練習でやってきたことを信頼して、前半にそれができました。ただ、後半は少し苦しくなり、相手のスピードに付き合ってしまいました」
そして! この代表復帰戦で大活躍したFLリーチ選手は、
「今の段階で勝ったのは嬉しいですけど、(ルーマニアが欧州予選を勝ち抜いた場合)ワールドカップではまた別のチームになるから喜んでもいられません。(個人的には)代表ジャージを着て久しぶりのトライができてよかったです。ボールを持って走ったのは今年初めてでした」
と笑顔。元キャプテンらしく気を引き締めることも忘れませんでした。やはり必要な戦力であったことを十二分に示した、見事な復帰戦だったと言えるでしょう。
この試合、プレースキック成功率100パーセントのSO小倉選手は4PGと3コンバージョンゴールを決めて18得点。こうした新鮮な戦力も機能し、終盤はルーマニアに意地を見せられたものの大事なテストマッチに勝ち切った日本代表は、6月17日(土)、24日(土)と、ワールドカップと同組となった世界ランキング4位のアイルランドを迎え撃ちます。
<取材・文・写真/齋藤龍太郎(楕円銀河)>