アルゼンチン戦と欧州遠征3試合を終え、11月のテストマッチ4連戦を1勝3敗としたラグビー日本代表、ジェイミー・ジャパン。初戦のアルゼンチン戦、ラストのフィジー戦は完敗ではありましたが、ジョージアにはアウェーで競り勝ち、ウェールズとは敵地カーディフで約74000人の大観衆を前に歴史的な大接戦を繰り広げ、再び世界を驚かせました。
そんな日本代表のキーマンはFWからBKまで様々なポジションに存在していますが、最後方からキックで仕掛けたり、相手や自らのハイボールを処理したり、またバックスリーとしてトライを取り切ったりと、まさに八面六臂の活躍を見せたのがFB松島幸太朗選手です。
エディー・ジャパンではCTB、最終的にはWTBで起用され、昨年のラグビーワールドカップイングランド大会でもトライにアシストにと大活躍するなど実力は折り紙付き。現在はジョセフHCとトニー・ブラウン アタックコーチが標榜する、キックを中心にゲームを組み立てるスタイルのラグビーにおいて、FBとして十分、いや、十二分にその役割を果たしています。苦戦したフィジー戦でも2トライをあげる活躍を見せました。
フィジー戦後、試合の振り返りや今後のことなどについて松島選手に聞きました。
──フィジー戦、自身の出来については。
「仕事、役割は果たせたんじゃないかなと思います」
──チームとしては試合の入りがよくありませんでした。
「最初、みんなフィジーの勢いに飲まれてしまった部分があった。そこからずるずる受け身になってしまって、後半の最初までジャパンらしいアタックとディフェンスができなかったですね」
──要因は。スキルの面でしょうか。
「スキルの問題もあったんですけど、それよりも結局は気持ちの問題だったと思います」
──疲れは。
「もちろんありましたけど、エディー(ジャパン)の時ほど疲れてはいないので(笑)、そこは大丈夫です」
──芝は。
「(スパイクの裏に)土がつくのでだんだん踏み込めなくなって、滑る状態も続いていたので、スパイクの裏をいちいち確認しないといけませんでした」
──キックがポイントになる戦術ですが。
「そうですね。でもただキックするのではなく、正確さも求められます。ハイボールを蹴ってコンテストできるエリア内に落とすというのが一番の目的なので、そういう正確さをどんどん磨いていきたいです」
──フィジーに対しても同じ戦術で臨んだ。
「はい。ちゃんと正確なキックをすればそこで止められるのですが、中途半端なキックをすると相手の一番やりたい状況にしてしまいます。ああいうチームに対しては的確なキッキングゲームを徹底する必要がありました」
──キックの自己評価は。
「ハイボールも自分で蹴って、競れるところは競れたので、しっかりできたんじゃないかと思います」
──フィジーのアタックへの対応は。
「自分たちの(ディフェンス)システムは外から被せていくものですが、どうしても上(高い位置でのパス)を通されるので、そうされるとどうしようもありませんでした。一人目が下にタックルして、二人目がボールを殺す。それがこの試合に関してはあまりできていませんでした。オフロード(パス)が来るというのもわかっているんですけど、早めに潰せなかった(のが反省点です)」
──トライを取り切るというバックスリーとしての仕事については。
「1つ目はFWのスクラムからBK全員の練習どおりのムーブができた結果です。そこからトライが生まれました。2トライ目は単純に(SH内田啓介選手の)クイックタップからだったので、相手が疲れていたところをちゃんと仕留め切れたトライでした」
──フィジーは前半32分という早い段階で14人になっていたので、もう少し早く相手を疲れさせることができたのでは。
「一人一人の役割という部分で、ちょっと違うことをやっている選手もいたりしたので、全員が同じページを見ていなかった(同じ方向を向いていなかった)という印象がありますね」
──それは戦術の理解不足?
「理解はしていると思うんですけど、フィジーからのプレッシャーに対してパニックになってしまったり、萎縮してしまった選手がいたと思うので、そこは完全に経験値の部分だと思います。新しい選手だけでなく経験のある選手にも見受けられました」
──ジョセフHCは「毎週同じパフォーマンスをしなければいけない」と言っています。
「そこも気持ちの面になると思います。毎試合、相手が強いからこう戦う、ではなく、毎試合同じメンタルで戦うのがベストだと思うので、相手どうこうではなく自分たちのラグビーをしっかり考えてやるというのが一番だと思います」
──同じページを見ていなかったというのはアタックとディフェンスどちらのこと?
「ディフェンスについては単純にタックルミスだったので、アタックのところでちゃんとシェイプ(チームとしての形)ができていなかったということです」
──欧州遠征を振り返って。
「キックゲームに対して自分のもらっている仕事を理解することがだんだんできてきたので、特に最後の2試合はFB、バックスリーの役割ができたんじゃないかなと思います」
──代表は約半年後になります。
「ジャパンの戦術も意識しつつ自分のスキルを高めていって、いいプレーをずっとしていけば、必然的にサントリーでも活躍できると思います。(その上で)またジャパンに呼ばれれば(いいですね)」
もはや日本代表の顔、不動のFBになりつつある松島選手。CTBやWTBもこなせるユーティリティーBKとして今後も間違いなくキャップ数を重ねていくことになるでしょう。まずが再開するトップリーグ、サントリーでの活躍に期待しましょう。
<取材・文・写真/齋藤龍太郎(楕円銀河)>