38−25で敗れたフランスでのフィジー戦終了後、日本代表の共同キャプテンでありこの試合でゲームキャプテンを務めたHO堀江翔太選手に話をうかがいました。
──後半からは立て直しましたが、ハーフタイムにはどのような話があったのでしょうか。
「ジェイミーからも(話が)あったんですけど、しっかりお互いをサポートし合おう、自分の役割をしっかり果たそうと話しました。後は気持ちの部分だと思っていたので、しっかり気持ちを入れてもう一回ひっくり返そう、しっかり点を取りにいこうという話をしました」
──しかし全体的にはフィジーにつながれて止めきれなかった印象です。
「つながれた部分もありましたし、アタックでも自分たちの形ができていなかったという部分もありました。ああいうプレッシャーの中で精度が高いプレーをしないといけないので、(そういう意味では)いい勉強をしました。(来年のスーパーラグビーを戦う日本チームの)サンウルブズでもああいう中で自分たちの形ができるようになればもっとよくなると思います」
──フィジーのプレッシャーは新しい選手たちにとっては想定を超えていたのでしょうか。
「新しい選手というより、全員がサポートしていければよかったとは思います。僕らの形ができそうなところでパスミスが起きたりしましたが、そういう状況でしっかりプレーして自分たちの形を作らなければならないということですね」
──ミスが多くなった理由は。
「自分たちのミスというよりかは、向こうからのプレッシャーが強かったからこそミスを犯してしまったという感じです。ああいうプレッシャーの中でもしっかりしたスキルで臨まなければいけません」
──フィジーが一人少なくなってから(前半32分以降)の戦い方は。
「テンポを上げようとしたら、すれ違いのところでのパスミスであったりとかがいらんかったかなというところですね。でも僕らがやろうとしているやり方自体は間違っていないと思います」
──欧州遠征を締めくくって、今いかがですか。
「よかったんじゃないでしょうか。新しい選手が混ざり合った中でもしっかりと全員が理解しようとして、全員が同じ方向を向こうとして、自分たちのストラクチャー(型通りの形)や戦術、戦略をしっかり信じてやろうとしているところが見えましたし、すぐにチームが一つになるような雰囲気も感じられたので、これで満足せず次にまたステップアップすれば、もっともっとよくなるんじゃないかなと思います」
──展開の速い攻撃が出ましたが、さらに上乗せするとしたらどの部分を。
「前(去年)のラグビーよりも自分たちの役割がすごく明確になって(いる分)、自分たちのラグビーの質を上げないといけない状況になっているので、(課題は)明確は明確です。自分の仕事の質を落としてしまうと上手くいかないということなので、もっと一人一人の役割を明確にして質を上げていければ今以上によくなると思います」
──「一人一人が役割を果たす」とは戦術理解の面でしょうか。
「ではないですね。個々の力を上げるのもそうですけど、細かいことは言えませんが各ポジションによって『動き方』が全く違うので、それを全うするということです」
──前半は受けに回り後半盛り返したことは、チームとしてポジティブに受け止めているのでしょうか。それとも。
「(ポジティブとネガティブ)両方ではないでしょうか。なるべくポジティブにしよう(受け止めよう)という気持ちはあります。(チームを)引っ張ろうというよりかは『何をしなければならないか』を明確にしようとしていたので、各自の仕事をしっかりしようという話はしました」
──終盤の3トライはそうして生まれた。
「そうですね。自分たちの仕事を全うした結果だと思います。最初はミスが多くて、相手が疲れる前に取られてしまった場面が多かったので。(終盤で)ミスが減ってきたのも自分がしなければならない役割というのを全うしたからです」
──中立地ということで試合の入り方が難しかったのでは。
「あることはあると思いますけど、試合によってモチベーションを上げたり下げたりしないようにと考えていたので、さすがに疲れた部分はあるかもしれないですけど言い訳になりません。テストマッチをしっかりと戦うというプライドは持ってほしいですよね。そこはあえて言わないようにしています。言わずとも感じなければいけないことなので。感じてもらえれば成功かなと思います」
──セットピースの感触は。
「よくなったと思いますよ。体重が明らかに(フィジーの方が)重たいなか耐えられたというのはよくなってきたということだと思います。スクラムはジョージアによく似ていたと思います。後ろからの押しですとか」
──3つのトライはどれが一番意図した通りのものでしたか。
「すべてではないでしょうか。相手が気を抜いた瞬間にトライが取れたという意味でも、すべてチームで取れたトライだと思います」
「プレッシャーの中でも高い精度のプレーを」と繰り返した堀江選手。課題が多いことは間違いありません。堀江選手のいう「気持ち」や「プライド」という部分もそうでしょうし、「各ポジションの動き」や「役割」という部分もそうでしょう。
しかし、課題があるからこそ強くなれる。それを痛感したという意味では、今回の欧州遠征は堀江選手もいうとおり「よかった」のではないでしょうか。負け越した以上「成功」と明言することはできないかもしれませんが、来年以降“あのときの負けがあったから強くなれた”と思えるようなチームへと成長を遂げてほしいと思います。そう期待したくなる試合でした。
<取材・文・写真/齋藤龍太郎(楕円銀河)>