【FL布巻峻介】「体が感じたままにプレーする」フィジー戦のキーマン

日本代表FL布巻峻介選手。

 

東福岡高校時代に超高校級のインサイドCTBとしてチームを花園の頂点に導いた逸材中の逸材は、早稲田大学3年時に突如FLに転向しました。それからまだ3年数か月しか経っていませんが、FW第3列の層が極めて厚い現所属のパナソニックでもFLとして出色の活躍を見せ、今季リーグ戦でもマン・オブ・ザ・マッチに輝くなどチームに貢献。そして今秋、初めて日本代表に選出されました。

 

異色のキャリアに見えますが、本人によると「CTBに飽きてきた」ことや「遊び心」がコンバートの理由だったといいます。CTBとして日本代表になれたかどうかはもはや知る由もありませんが、FLとしてわずか3年のキャリアで日本代表の座をつかんだことは確かな事実です。布巻選手が「逸材中の逸材」であることは、違う形で証明されたのかもしれません。

 

ディフェンスが大きな武器となっている現在の日本代表。ジョージア戦、ウェールズ戦とまだわずか2キャップではありますが、こうしたビッグマッチを経験し間違いなくそのキーマンとなっている布巻選手に、これまでの活躍や3キャップ目が決まったフィジー戦(7番で先発出場)に向けての思いを聞きました。

 

──これまでブレイクダウンで大きく貢献してきたと思いますが、自身での評価は。

 

「それが仕事というところがあるので『貢献している』という感じはないですけど、ある程度の仕事はできているのかなと思っています」

 

──世界的FWは布巻選手よりも大柄です。体格面の劣勢をカバーするには。

 

「もちろん相手の方が全然強いですし、プレッシャーも受けます。そこで(劣勢を補うためには)スキルが重要です。もちろん正面衝突では負けてしまいますが、真正面に倒すだけがタックルではないですし、しっかり倒す方法は何種類もあるので、その使い分けが必要です。あとは小柄なぶん動けるという利点もあると思っているので、早めにスペースを奪ったりして相手を上回っていきたい。『(相手を)こう倒そう』という感覚はないですし、考える暇もないので、体が感じたままにプレーしています

 

──ディフェンスから一転してアタックに転じるケースが多いですが、アタックへの貢献の実感は。

 

「直接的ではないかもしれないですけど、僕のタックルやチームのディフェンスからいずれトライにつながる、という感じでしょうか。結局どのプレーもトライにつながるので一概にこれ(がトライにつながるプレー)とは言えませんが、その一部になれるようにがんばっています

 

──ウェールズ戦前半37分のWTB山田章仁選手のトライは布巻選手のプレッシャーが皮切りになりました。

 

「僕が(前に)出たからアキさん(山田)も出たのだと思いますし、僕が出られるのは他のみんながブレイクダウンに時間をかけてくれているからなので、つながりはあると思います。そういうチームだからしっかりディフェンスができるということですね」

 

──次のフィジーはウェールズとタイプが違うチームですが、個人的に意識していることがあれば。

 

「(フィジーは)ステップが多くなると思うので、タックルは飛び込まずにできるだけ相手に近づいていきたいと思っています」

 

──フィジーのオフロードパスには警戒していますか?

 

「個で行ってしまうとオフロードだったり普通に抜かれることもあると思うので、個人で行きたいところをチームでやっていくという“がまん”が必要だと思います。『自分が止める』と一人で行くのは絶対にしてはいけないことです」

 

──では今週はディフェンスを重点的に?

 

「(今週)というより、(日本代表の活動が)始まってからその(ディフェンスを重視する)軸自体はずっとあったので、(相手が)フィジーだからというのはなく、1週1週よりレベルアップしていくということが試合の対策になっています

 

──ツアー最終戦、先発として特に貢献したい部分は。

 

「ディフェンスにしろ、ブレイクダウンのサポートにしろ、すべてのプレーで自分がやること1個1個の質を高く求めてやっていきたいと思っています。それによってチームに勢いをもたらしたいですね」

 

2キャップという経験の若さを感じさせないほどの信頼感を、早くも築き上げつつあるFL布巻選手。フィジアンたちの跳ねるようなステップ、相手を欺くオフロード、持って生まれた本能のように動く彼らを止めるには「体が感じたままにプレー」する布巻選手の存在がやはり不可欠でしょう。

 

<取材・文・写真/齋藤龍太郎(楕円銀河)>

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