ブルズに勝った!サンウルブズがホーム秩父宮で南アフリカ勢から初白星

スーパーラグビー初参戦の昨季は1勝(1分13敗)に終わり、今季は開幕5連敗(5敗)と苦戦続きだったヒト・コミュニケーションズ サンウルブズ。待望の今季初勝利を挙げるとともに、スーパーラグビー(当時スーパー12)創立時のオリジナル12チームの一角から初めて白星をもぎ取りました!(昨季の1勝はサンウルブズと同じく新チームのジャガーズからの勝利でした)

 

勝利の瞬間、喜びを爆発させるサンウルブズのメンバー。

勝利の瞬間、喜びを爆発させるサンウルブズのメンバー。

 

その舞台となったのは4月8日(土)、東京・秩父宮ラグビー場。弱い雨が降りしきるなか行われた今季第7節の相手は、南アフリカのブルズでした。現在スーパーラグビーに参戦している南アフリカ6チームの中で唯一優勝経験があり、それも3度も頂点に立っている名門です。

 

ブルズのキャプテンは南アフリカ代表66キャップのHOアドリアーン・ストラウス選手。2015年のラグビーワールドカップ、日本代表戦で後半21分にSH田中史朗(現サンウルブズ)を吹っ飛ばし豪快にダイビングトライを決めた選手です。LOルード・デヤハー選手、SOハンドレ・ポラード選手、FBジェシー・クリエル選手といった同じく一線級の選手は休息やけがのため欠場しましたが、CTBにはヤン・サーフォンテイン選手(南ア代表26キャップ)が入るなど豪華な布陣で落とせないサンウルブズ戦に臨みました。

 

サンウルブズNO8ラーボニ・ウォーレンボスアヤコ選手のトライ。トップスピードに乗って相手をかわした鮮やかなトライでした。

サンウルブズNO8ラーボニ・ウォーレンボスアヤコ選手のトライ。トップスピードに乗って相手をかわして決めた鮮やかなトライでした。

 

しかし結果はご存じのとおり、サンウルブズが21-20で見事逆転勝利! 前半6分、サンウルブズNO8ラーボニ・ウォーレンボスアヤコ選手が突破力を活かし先制トライを挙げると、10分にはSOヘイデン・クリップス選手がPGを決めて8-0に。ブルズもCTBバーガー・オデンダール選手のトライで8-7としますが、その後互いにPGを1本ずつ決めて11-10となり前半終了を迎えます。

 

WTB中鶴隆彰選手のトライは相手ディフェンスが届かない大外にポジショニングしていたことが功を奏しました。

WTB中鶴隆彰選手のトライは相手ディフェンスが届かない大外にポジショニングしていたことが功を奏しました。

 

後半はブルズが本領を発揮し、8分にSOティアン・スクーマン選手のPG成功(11-13)で逆転し、さらに23分にはターンオーバーからWTBトラビス・イズマエル選手がトライを追加し11-20。終盤に失点を重ねる傾向にあるサンウルブズですが、9点のビハインドを追うこととなったこの展開から粘りを見せます。29分にはWTB中鶴隆彰選手が途中出場のSO田村優選手からのロングパスを受けてスーパーラグビー初トライ。18-20とし、さらに34分にはSO田村選手がPGを決めて21-20と逆転に成功。その後ブルズは得点のチャンスを得ますがスコアは動かせず、ホーン後にSH矢富勇毅選手がジャッカルで相手ボールをターンオーバー! WTB中鶴選手が蹴り出せば試合終了という状況でトライを狙いに行き、ラックになったところでSH矢富選手が冷静にボールをタッチへ蹴り出しました。勝利の瞬間、12940人のファンは総立ちでサンウルブズの今季初勝利、それも名門ブルズからの白星を祝福しました。

 

冷静にPGを決めたSO田村優選手。これか決勝点となりました。

冷静にPGを決めたSO田村優選手。これか決勝点となりました。

 

試合後の記者会見で、サンウルブズのフィロ・ティアティアHC(ヘッドコーチ)は、

「勝てて非常にハッピーです。集合した2月上旬からチームはハードワークを重ねてきました。ここまで成長できたことを幸せに感じています。今日はキックチェイスの部分で向上できました。リザーブ選手の意識も、変えることができました。彼らがベンチから出るときに、落ち着いて試合に入ってしっかりとゲームプランを遂行し、チームにエナジーを与えてくれるよう、試合前に伝えました。今日は、序盤からいいスタートを切ることができたし、23人全員が勝利に貢献したと思います」

と用意したプランや指示どおりにゲームが運ばれた結果勝つことができたことを喜びました。ただ同時に、

「終了直前に(SH矢富選手が)ターンオーバーしたとき、コーチボックスにいたコーチたちはみな“蹴り出せ!”と叫んでいたのですが、私は1人だけプレーを継続してもう1トライ獲りたいと考えていました。最終的にボールを蹴り出した矢富の判断は正しかったのですが、個人的にはトライを挙げて欲しいという思いがありました」

と、ひとり密かにトライを期待していたことを正直に打ち明けました。

 

初めてゲームキャプテンを務めたCTBティモシー・ラファエレ選手は、

「今日の試合はベリー・ハッピー。それから、はるばる東京まで来て、いい試合をしてくれたブルズの健闘をたたえたいです。選手全員がこの勝利を待ち望んでいたので、うれしく思っています。前回の対戦に比べて、ミスが少なくなったことが勝因。キックチェイスも向上したと思います。試合前の1週間は、お互いにコミュニケーションをとって、周りの選手と連携する練習を続けてきました。それが試合に生きました」

と勝因を語りました。

 

サンウルブズとして初出場し80分間働き続けたFB松島幸太朗選手は、得意のハイパントキャッチについて、

「練習では全然捕れなくて、ちょっと不安が残っていたんですが、今日はスイッチを入れて、ちゃんと捕ることができたので良かったです。ハイパントを捕れないと、ミスから悪循環に陥るので、ちゃんと捕れて良かった。いいキャッチングもできたと思います」

と自身に合格点を与えていました。

 

後半から出場し決勝PGを決めたSO田村優選手は、

「長い間休んでいた分、自分のプレーへの責任を感じていました。いい場面でキックのチャンスがきたと思っています」

とコメント。選手もコーチも一様に喜びと達成感を表現していました。

 

第8節は6戦全勝中のニュージーランドの強豪クルセイダーズとアウェーのクライストチャートと対戦するサンウルブズ。ニュージーランド3連戦とアルゼンチン(ジャガーズ戦)という長い遠征で、さらなる収穫を得て帰ってくることを期待しましょう。

 

<取材・文・撮影/齋藤龍太郎(楕円銀河) 取材協力/永田洋光>

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