2017年以来5年ぶりの対戦だ。日本代表は世界ランキング2位の強豪、フランスをホームに迎えた。今年に入って初めて迎えるランキング上位国との対決で、2023年のラグビーワールドカップで4強以上を目指す日本代表の現在地を推し量ることができる、そんな2連戦に臨むこととなった。
2連戦の1戦目、7月2日(土)の試合は豊田スタジアム(愛知県)で開催。猛暑が続く中24570人ものファンが会場に訪れ、38年ぶりに来日した「レ・ブルー」と日本代表の激闘を見守った。過去の対戦成績は日本代表の9敗1分け。2017年の前回対戦は23-23と初めての引き分けで、今回は未だない初勝利を目指す対戦ともなった。
日本代表ジェイミー・ジョセフHCは試合2日前のメンバー発表会見で「この試合が出発だと思っている。2年半で5、6試合しかできていない遅れを取り戻していく必要がある」と語り、セレクトした23人のメンバーには「一人一人が仕事すること」を期待した。
なお、HO堀江翔太、SH齋藤直人、FB野口竜司がコンディション不良により代表を離脱したことも発表され、試合直前には当初先発予定だったSO山沢拓也の欠場も決定。要の10番には6月25日のウルグアイ戦で代表デビューを飾ったばかりの李承信が入り、急遽の出場が初先発という大役を担った。
前半、まずは先制したい日本代表だったが、キックオフ早々の3分、フランスにスクラムを起点に攻められるとWTBダミアン・プノーに先制トライを許す。FBメルヴィン・ジャミネのゴールも決まり0-7とされるが、日本代表も落ち着いて反撃に出る。
6分、SO李がPGを決めて3-7とすると、14分には敵陣ゴール前まで前進し、ラックからSH茂野海人のパスを受けたNO8テビタ・タタフが持ち前の力強い前進で相手ディフェンスを押しのけるようにしてトライを決め、逆転。SO李のゴール成功で日本代表が10-7とリードする。
19分にはフランスFBジャミネのPGで10-10の同点に追いつかれるも、25分には日本代表SO李のPGで13-10と再び3点をリード。29分には再びフランスFBジャミネにPGを決められ13-13となり、そのままハーフタイムへ。日本代表は追いつかれる形にはなったものの、前半40分で互角の好勝負を演じた。
後半も前半の攻勢と堅守を引き継ぎたい日本代表だったが、後半はフランスが世界ランキング2位の実力を見せつける。5分にはWTBマチス・ルベルのトライとFBジャミネのゴールで13-20と勝ち越しを許すと、12分には再びFBジャミネがPGを決めて13-23。
10点差とされた日本代表は、直後の14分にSO李のPG成功で16-23と7点差としたものの、18分にはフランスWTBプノー、21分にはCTBヨラム・モエファナ、28分にはHOピエール・ブルガリットのトライなどで16-42と一気にリードを広げる。
このままでは終われない日本代表は最後に見せ場を作る。試合終了間際の82分に敵陣深い位置まで攻め込むと、途中出場のSH中嶋大希のワンバウンドのパスを拾い上げたWTBシオサイア・フィフィタがインゴールに飛び込んでトライ。23-42で敗れたものの、日本代表は最後に意地を見せた。
日本代表のジョセフHCは試合後の記者会見で前半の健闘について質問されると、
「自分たちとしては前後半80分間の試合だと思っています。暑い中プレーすることの難しさを感じましたし、13-13で終えた前半は非常にタフでフィジカルだったと思います。ただ、後半に入って数分でトライを獲られてしまい、7点を追う形でスタートしたことに関しては自分たちにとって改善すべき点だと思っています。後半はミスが多く、フランスにプレッシャーをかけられてしまいました。ただ、日本としての意識、自分たちからしっかりアタックを仕掛けていく意識はよかったと思います」
と答え、課題を示しながらも一定の成果を認めた。
キャプテンのHO坂手淳史も、
「後半もいい形でアタックしていましたし、ハーフタイムもいいコミュニケーションがとれて、最初の10分でフランスは(攻めて)来るだろうという話をしていました。そこで自分たちはポゼッションラグビーをしたいという話をしたのですが、遂行力の部分はあまりよくなかったです。そのミスからボールを拾われて、ビッグゲインやアウトサイドでのゲインからペナルティを重ねてしまうなどのミスが出てしまいました」
と次に向けての課題を挙げた。ジョセフHCは最後に笑顔を見せ、
「選手たちを本当に誇りに思います。今週はディテールを落とし込んでいる最中に(一部の)選手がいなくなってしまうという逆境の中で、落とし込みをしていかなければなりませんでした。選手がいなくなっていく中でも入ってくる選手がそこにしっかり対応し順応していくことは、来年に向けてもそういう選手がたくさん出てきているということですので、自分たちのファーストステップとしては非常によかったのではないかと思います」
と、この試合が大きな収穫になったことも明かした。
フランス代表のファビアン・ガルチエHCは、「この試合で良かったことは?」という質問に対し、
「まず勝利です。目標は勝つことでした。内容的にもポジティブな要素が多く見られました。このチームは若く、このチームとしての経験をまだ積んでいない。平均年齢はたったの25歳です。若いチームですが、前半に起こったことを理解し、後半は反応しプレーし始めることができました」
と答え、「ハーフタイムに何を変えたか?」と問われると、
「やりたいことと、できないことの擦り合わせをしました。できなかった理由はたくさんありますが、まず日本のスピードとインテンシティー(強度)が大きな理由でした。コリジョンでも、ディフェンスのポジショニングでも、ポゼッションでも、常に遅れをとっていました。苦境に追い込まれそうになっていましたが、前半を13-13で終えました。メルヴィン・ジャミネの大きなトライチャンスがありましたが、得点できませんでした。相手を観察することをやめるように言いました。このチームでプレーをするのは初めてだったので、自分たちのプレーの感覚を見つける必要がありました。アタックでもディフェンスでも最初の一歩を踏み込まなければならなかった。普段はミスしないところでミスもありましたが、糸口を見つけることができました。そこから全ての扉が開きました」
と語り、特に前半は苦戦したこと、そこから打開を図り成功したことへの手応えを語った。
キャプテンのFLシャルル・オリヴォンも、
「前半は凄まじいリズムでした。事前に研究はしていましたが、日本が至るところでプレーしてくるので驚かされた部分もあります。身体的にキツい時間帯もありました。日本はボールを持つとどんどん仕掛けてくる。でも少しずつ修正して前半の終盤から仕事ができるようになり、FWがラックに入りBKがプレーしやすくなりました。試合が進むにつれてこちらに流れが傾いてきました。修正して、みんなでチームのためにプレーしました。チームのマインドセットが見えました」
と、序盤は日本代表のラグビーへの対応に苦労したことを明かした。
テストマッチ自国最長連勝記録となる9連勝を飾ったフランスとの2戦目は、7月9日(土)に国立競技場(東京)で行われる。
取材・文・撮影/齋藤龍太郎(楕円銀河)
記者会見取材・フランス語翻訳/福本美由紀