史上6度目のテストマッチとなった。10月23日(土)、日本代表対オーストラリア代表の一戦が行われ、昭和電工ドーム大分(大分県大分市)には17,004人もの観客が訪れた。国内では2019年のラグビーワールドカップ日本大会以来となるテストマッチ。日本代表にとってはファンの期待を一身に背負っての試合となった。
「ワラビーズ」の愛称で親しまれているオーストラリア代表は、ラグビーワールドカップで2度の優勝を誇る強豪だ。今年10月2日まで行われていたザ・ラグビーチャンピオンシップで世界ランキング1位(2021年10月25日現在)の南アフリカ代表に連勝するなど、現時点で最も勢いのある世界ランキング3位(同)のチームである。キャプテンのFLマイケル・フーパーや、今年のザ・ラグビーチャンピオンシップのトライ王(7トライ)のWTBアンドリュー・ケラウェイなど、昨季トップリーグで活躍した選手に加え、引き続きリーグワンを主戦場とするSOクウェイド・クーパーが先発出場した。
6度目の対戦にして初勝利を目指す日本代表は、新たにキャプテンに就任したFLピーター・ラブスカフニ、副キャプテンのCTB中村亮土、不動のルースヘッドPR稲垣啓太、スーパーラグビーで出色の活躍を見せたNo.8姫野和樹、現チーム最年少のWTBシオサイア・フィフィタらが先発。SH流大、SO松田力也の帝京大出身コンビがハーフ団としてチームのアタックを牽引した。FLベン・ガンターは初キャップで、CTBディラン・ライリーも出場すれば初キャップ。なお、当初リザーブ入りしていたFLリーチ マイケルは試合前日に負傷し、代わりにFL德永祥尭が入った。
記憶に新しい2017年11月4日の前回対戦は、30-63でワラビーズが圧勝。しかし、この試合が初キャップとなったLO(この試合は4番でフル出場)姫野和樹が後半42分に代表初トライを決めるなど、日本代表は3トライ。33点差が今回どこまで埋まるのか、日本のみならず世界が注目する一戦となった。
前半、攻撃の口火を切ったのはワラビーズだった。7分にWTBトム・ライトが先制トライを決めると、プレースキッカーのSOクーパーがゴールを決め、0-7。16分に日本代表SO松田がPGを決めて3-7としたが、22分にはラインアウトモールを起点に攻めたワラビーズが右大外までパスをつなぎ、途中出場のWTBジョーダン・ペタイアがトライ。3-14と日本代表を突き放す。
しかし直後の26分、9フェーズ重ねて敵陣深い位置まで攻めた日本代表はSO松田が右大外に向けてキックパスを放つ。WTBレメキ ロマノ ラヴァがキャッチすると相手ディフェンスをかわして右隅へトライ。SO松田のゴールも成功し10-14とすると、33分にもSO松田がPGを決めて、13-14と1点差に迫る。41分にはワラビーズSOクーパーがPGを決めて13-17とされるが、わずか4点ビハインドで前半終了を迎えた。
1トライで逆転可能な接戦に持ち込んだ日本代表は、後半も引き続き攻勢をかけようとしたが、追加点を挙げたのはワラビーズだった。後半2分、PRタニエラ・トゥポウが持ち前の突破力でインゴールまで走り切り、13-22とリードを広げられる。さらに8分、WTBレメキが危険なプレー(ショルダーチャージ)によりシンビンとなり、数的不利に陥った後半10分、ワラビーズFLロブ・レオタにトライを奪われる。スコアは13-27、14点差となった。
後半14分、日本代表SO松田のPGが決まらず反撃の機運が途切れたに見えたが、直後の15分、ワラビーズのパスをインターセプトしたCTB中村が独走し、チーム2トライ目を決める。コンバージョンキックは途中出場のSO田村優が難なく成功させ、20-27と点差を1トライ1ゴールで追いつける7点に縮める。
ラスト10分を切った後半34分、SO田村がPGを決めて23-27と4点差に迫ると、一気に逆転への期待感が高まる。しかし38分、ワラビーズはラインアウトモールからHOコナル・マキナニーがトライを決めて、23-32。これが最終スコアとなった。
日本代表は初勝利ならず、対ワラビーズ戦は6戦全敗となった。しかし9点差はこのカードでは最小。ペナルティーの多さ、スクラムの劣勢やラインアウトのミスなどが響き勝利のチャンスを逃したが、世界のトップチームからの勝利に手が届く位置まで来たことを証明する敗戦となった。
試合後の記者会見で、ワラビーズのデイヴ・レニーHC(ヘッドコーチ)は日本代表のラグビーを称えた。
「我々のラグビーはある程度やれたが、ちょっといらついたところもあった。スペースへのプレッシャーなどはもっとできたはずだ。勝ててうれしいが、もっとよくできたのではないかと思う。日本はボールを動かしたりキープしたりと、よくやっていた。私たちももっと規律を持ってやらないといけなかった」
同キャプテンのFLフーパーも日本代表の変化についてコメントした。
「(2017年の対戦から)急速に成長している。ブレイクダウンでも日本からのプレッシャーはよかった。セットピースもよくなっており、様々な面でスピード感をもって成長していると感じた」
日本代表のジェイミー・ジョセフHCは課題を口にした。
「7月から時間が空いて最初の試合だったが、いいプレーができたと同時に改善点も見つかった。まずは規律。17回もペナルティーも出すと(公式記録では14回。17回はチーム内の見解)強豪には勝てない。ミスが出た時間帯やタイミングも影響した。チームはこれからも成長していくので、改善していきたい」
キャプテンとしての初陣となったFLラブスカフニも反省の弁に終始した。
「今日のプレーを誇りに思っているが、自分たちのミスからとられてしまった。(4点差だった)後半に向けてもモチベーション高く、全員が同じ画を見ていた。マインドセットは変わらなかったが、自分たちのミスからその(逆転の)機会を逃してしまった」
SOとして先発した松田力也は、
「楽しむことを第一に、いいメンタルで臨めた。チームは負けたが、改善点含めまた成長していきたい。ずっと先発できないなかで チャンスが来たらそれを掴めるようにと考えていた。周りのみんなに支えられてプレーできた。チームを勝利に導けるようなコントロールしてアピールしていきたい(前半26分のWTBレメキのトライは)レメキのコールを信じて蹴ればスコアしてくれると信じていた」
と語り、今後も出場機会を増やし貢献していくと誓った。
日本代表は欧州に遠征し、11月にアイルランド、ポルトガル、スコットランドと敵地で対戦する。秋の4戦全勝は逃したものの、欧州遠征での3連勝を目指し、まずは7月に敗れた強豪アイルランドからの白星を目指す。
取材・文・写真撮影/齋藤龍太郎(楕円銀河)