「あの時、世界の壁を感じました。悔しい思いをした試合だったので、今回その雪辱を果たしたいという思いはあります」
ニュージーランド戦のキャプテンズラン(前日練習)後にそう語ったのは、日本代表WTB福岡堅樹選手でした。
福岡選手が述懐したのは5年前のことです。2013年11月2日、当時のエディー・ジョーンズHC(軽い脳梗塞のためこのニュージーランド戦とその後の欧州遠征は指揮できず)体制下で、ニュージーランド代表“オールブラックス”を秩父宮ラグビー場に迎えました。
当時のキャプテンはNO8リッチー・マコウ。BKにはSOダン・カーターを擁するなど、ニュージーランドは他の強豪国との対戦時とそう変わらないメンバーで日本代表戦に臨んだのです。
日本代表はキックオフ早々、ニュージーランドに先制トライを許した後、FB五郎丸歩の2本のPGで6-7と迫ります。しかしその後徐々に突き放され、後半40分時点で6-54とされてしまいます。
すでに勝負はついていました。しかしノーサイド直前、日本代表はラストプレーで絶好のトライチャンスを迎えます。ゴール前で攻め続け、左大外に構えていたWTB福岡堅樹選手にラストパスが渡ると、インゴール左隅にグラウンディング、したかに見えました。日本代表の意地の1トライ。そう思われましたが、TMOの結果、NO8リッチー・マコウ選手らの必死のタックルによって福岡選手の足がタッチに出ていたことがわかり、結局ノートライとなりました。
「最後の一瞬までの粘りであったり、勝ちが決まっている中でのラストワンプレーのディフェンスに、トライを取らせないという意地を感じました。今回はその壁を越えていきたいと思っています」
福岡選手はそう語り、世界の壁を越えるべく静かに燃えていました。なお、この場面については、途中出場していたSO小野晃征選手も書籍『オールブラックス・プライド』(齋藤龍太郎著/東邦出版)のなかで「オールブラックスのプライド」を感じたと振り返っています。
さて、WTBとしてトライを決め切るフィニッシャー、というイメージが強い福岡選手ですが、実際にはチームプレーに徹するタイプで、「何としても自分がトライを」というスタイルの選手ではありません。
ただ、今回のニュージーランド戦は違うそうです。5年前に決め切れなかったトライを今度こそ、という思いを強くしています。
<日本代表メンバー>
1 稲垣啓太
2 坂手淳史
3 山下裕史
4 ヴィンピー・ファンデルヴァルト
5 アニセ・サムエラ
6 リーチ マイケル ※キャプテン
7 姫野和樹
8 ツイ ヘンドリック
9 流大
10 田村優
11 福岡堅樹
12 ラファエレ ティモシー
13 ウィリアム・トゥポウ
14 ヘンリー ジェイミー
15 山中亮平
16 庭井祐輔
17 三上正貴
18 ヴァル アサエリ愛
19 ヘル ウヴェ
20 中島イシレリ
21 田中史朗
22 松田力也
23 中村亮土
<ニュージーランド代表メンバー>
1 オファ・トゥウンガファシ
2 デーン・コールズ
3 アンガス・タアヴァオ
4 パトリック・トゥイプロトゥ
5 ジャクソン・ヘモポ
6 ヴァエア・フィフィタ
7 ダルトン・パパリイ
8 ルーク・ホワイトロック ※ゲームキャプテン
9 テトイロア・タフリオランギ
10 リッチー・モウンガ
11 ワイサケ・ナホロ
12 ンガニ・ラウマペ
13 マット・プロクター
14 ネヘ・ミルナースカッダー
15 ジョーディー・バレット
16 リアム・コルトマン
17 ティム・ペリー
18 ティレル・ロマックス
19 ディロン・ハント
20 ガレス・エヴァンス
21 ミッチェル・ドラモンド
22 ブレット・キャメロン
23 ジョージ・ブリッジ