第1試合、同志社大学12-74東海大学。第2試合、帝京大学42-24天理大学。
1月2日、秩父宮ラグビー場で行われた全国大学選手権準決勝。いずれも大なり小なり差はつきました。しかし、それぞれに見どころのある準決勝だったのではないでしょうか。特に第2試合、天理は帝京に対しスクラムで完全に優勢に立ち、FBジョシュア・ケレビ選手を起点、また終点(ハットトリックの活躍でした)としたアタックで最後までV7王者を苦しめました。
最終的に大差となった第1試合も、前半0-21と東海にリードされた同志社はFB崎口銀二朗選手、WTB安田卓平選手の快足バックスリーによる連続トライで12-21とし、一時は試合の行方がわからなくなりました。昨シーズンの大学選手権決勝で相見えた東海、帝京の下馬評が高かったのは事実ですが、関西大学Aリーグの1位(天理)、2位(同志社)もこの準決勝の舞台に立つべくして立ったことを見事に証明した、そんな2試合でした。
試合後の関西2校の記者会見も印象的でした。
かつてトップリーグのクボタスピアーズを率いた同志社大学の山神孝志監督は、
「やっと帰ってきた『場所』が、なかなか水が合わなかったというのが率直な感想です。先週の花園からこちら(秩父宮)へ来て、自分たちの戦うフィールドとして落ち着きが最初なく、ミスが重なってきたところで同志社の思うようなプレー、アンストラクチャーのところで競うプレーができなかった」
と、チームとして場数を踏んでいない『場所』(「秩父宮」だけでなく、「準決勝の大舞台」という意味合いも含まれていると解釈できます)での戦いだったと語りました。慣れない「アウェイ」で試合を重ねることを含め、この『場所』で場数を踏み続けることが日本一を目指す上では不可避なのかもしれません。
「自分たちの持ち味を出しながら戦ったというところでは、学生たちはよくやってくれました。このフィールドでしか学べないことをやりながらでないと、(決勝への壁を)突破することはできないと感じました。(ですから)ここに戻ってきて戦ったことは財産です。4年生は残念でしたが一つ一つ節目を作ってきた学年だったので、褒めてやりたいと思います」(同志社・山神監督)
同志社は来季に向けて確かな手応えを感じていました。15人制と7人制の日本代表を経験しているWTB松井千士選手ら強力な4年生が抜けても、その「財産」を糧にさらなる高みを目指してほしいと思います。
そして、最後の最後まで帝京に食らいついた天理の小松節夫監督は試合後の会見でこう語りました。
「帝京さんの圧力に少しずつやられることが多くなり、点差は開いてしまいましたが通用する部分もたくさんありました。ちょっとした差で帝京さんのゲームになってしまった印象です。ただ、どこのチームも帝京さんに点差を広げられてしまうことが多いなか、最後まで攻め続けられたというところに成長の跡が見られたと思います」
V7王者の帝京も僅差で準決勝や決勝を勝ち切ってきた歴史がありますので、帝京の岩出雅之監督も「厳しいゲームになったが結果的には不安のないゲームだった」とこの試合を評しましたが、天理は確かに帝京を苦しめていました。
「今日の試合は負けてしまいましたが、日本一のチームにチャレンジできましたので、さらに強いチームを作って日本一を目指し、もちろんこれまでも(そのつもりで)活動してきましたが、本当の意味で選手たちは日本一を強く意識できたと思いますので、そこに向かってがんばっていきたいと思います」(天理・小松監督)
続いて、PR山口知貴主将は、
「スクラムで押し込んだりターンオーバーできたことはすごい成長だと思っているので、自分はこれで(大学生活が)終わりですが、そこは継続してもらっていいチームを作って帝京に勝ってほしいと思います」
と下級生に思いを託しました。同志社然り、準決勝の舞台での経験は間違いなく来季へとつながっていくことでしょう。
さて、決勝に勝ち進んだ東海、帝京は、前述の通り昨季も決勝で対決しています。1月9日(月)は3度目の決勝での対決となります。今回、準決勝で対戦した2校からはそれぞれどう映ったのでしょうか。
まず同志社から見た東海は、こうでした。
「我々の時間帯をなかなか作らせてくれなかったのが東海さんの強さ。悔しいですが差を感じましたし、素晴らしいチームだなと思いました。まず、ペナルティーをなかなかしてくれないし、一つ一つのプレーの精度が非常に高い」(同志社・山神監督)
「(プレーの)精度、ミスしないことなど、どれも東海さんが上だとあらためて感じました」(LO山田有樹主将)
つまり、プレー精度の高さ。ミス、ペナルティーの少なさ。これが東海の強みです。もちろんセットピースの強さもこれに加わります。
そして天理から見た帝京は、
「帝京さんのアタックに対してうちのディフェンスがどれぐらい通用するのかということをキーポイントに(して)臨みました」(天理・小松監督)
「ポイントは絶対に一人一人のディフェンスにかかっていると思っていたので、ディフェンスで体を張ってがんばろうと試合に臨みました」(PR山口主将)
と、ディフェンスにフォーカスした結果、その圧力にはじわじわ屈していったもののある程度通用したという見解でした。セットピースで優勢に立っていた天理がそれでも帝京に勝てなかったのは、それだけ帝京のアタックが強力であり、ブレイクダウンでの圧力がすさまじいことを示していると言えるでしょう。
東海の木村季由監督は、決勝に向けての課題を語りました(会見時点では対戦相手未定)。
「試合の中で自分たちが通用している部分であったり、チャレンジしなければならない部分などをリーダー中心に判断してもらって、(そこは)全体的によくコントロールできていました。細かなミスがまだありますが、そういうところは本人たちがよく自覚していると思いますので、しっかり残りの時間で修正して次に臨みたいと思います」
一方、日本ラグビー界でかつてどのチームも成し得ていない8連覇に王手をかけた帝京の岩出監督は、
「東海さんも去年我々が勝たせていただいた分だけ期するものがあるでしょうし、その分積み上げてきたものも多いでしょう。(しかし)そこに我々が勝っていけるように、我々も1年間全部員全スタッフで積み上げてきたものがありますから、とにかくそれをしっかり出し切ろうという思いから(練習を)スタートしたいと思っています」
と、東海の初優勝への思いを警戒しながら、それ以上の積み上げへの自負を隠しませんでした。
準決勝で確かな差を見せた現大学ラグビー界の「2強」は、2年連続3度目の決勝対決でどのような戦いを見せてくれるでしょうか。もちろん勝敗も気になるところですが、それを超越した日本ラグビーの今後への光明を見出せるような素晴らしい戦いを期待しています。
決勝は、1月9日(月)成人の日の14時、秩父宮ラグビー場でキックオフです。
<取材・文・撮影/齋藤龍太郎(楕円銀河)>